Sho Yamamoto

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「新幹線の乗り方」新幹線に乗ることが多い。今年は年間で、100回近くいくのではないだろうか。ほとんどすべてが東海道新幹線なのだが、その中でもよく乗るのは各駅停車のこだまである。　のぞみに乗るのは大概東京大阪間で、のぞみは席のほとんどが指定席なのと、2時間半座れない可能性があるのはきついので、基本的には指定席を取る。しかし、こだまで東京静岡くらいまでとなると微妙なところだ。　そもそもこだまは、自由席の数の方が多いので、変に指定席を取るとむしろ混雑した車両に乗ることになってしまう。昔はそれでも席が取れることの安全性をとっていたが、コロナ禍で少し事情が変わり、できることなら空いている車両に乗りたいと思うようになった。こだまの自由席は1-7号車と、13-16号車だ。新幹線のホームは大体階段などが中央付近に寄っているために、真ん中のグリーン車付近がもっとも移動には便利である。これはもちろん到着が同じ時間なのに高い料金を払っている人の特権だと考えてもあまり不満はないだろう。　当然自由席でもその利便性を求めてなのか、あるいはただ入り口から近かったからなのか、やはり7号車あたりは混雑する。多くの人がホームのこのあたりで待っており、車内も混むことが多い。　しかし考えてみればここが混むことなど大概予想できることなのだ。始発の東京駅ならともかく、途中から乗る場合はなおさらだ。結局車内で歩いて席を探すことになり、もっと離れた車両まで移動することになる。移動距離が同じなんだから、ホームで移動しておけば良いではないかと思うのだが、もしや地面との相対速度をより大きくすることに何かしらの意味を感じているのであろうか。　など、とよく思ってはいたのだが、これも実はこだまで指定を取るべきかと同じ問題なのである。経験則からいっても7号車が空いてる可能性も十分にあり得る。そもそも新幹線そのものがかなり空いている時間帯もあるのだ。であれば、わざわざ入り口から遠くの車両に乗るのは時間の無駄だ。　いずれにしてもグリーン車に乗れば解決するのだが、何かそうではない上手いやり方がないものか乗るたびに考えている。 #エッセイ

2022/09/10に公開

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「京王線三大パン屋」　パンが好きだ。ごはんも好きだが、パンはパン屋ごとの違いが大きく、そのパン屋までわざわざ出かけていく意味があるところが面白い。　東京都内に限らず、こだわりのパン屋は多く、昔ながらの惣菜系のパンもあればいわゆるハード系といわれるフランスパンなどを中心としたお店も地方でも増えてきた（こういったところは今風でおしゃれな印象の店が多いだろう）。それでもやはり、都内のパン屋の充実度は圧倒的でさらにいえば一部のエリアに有名なパン屋が集中しているともいえる。　パン好きの人と話をすると、まずその人がどのエリアに住んでいるか、あるいは普段どのエリアにいるか、というような話からいわゆるホームとしているパン屋の話などになる。大概の人は、有名な店舗のものは一度は試していることが多いので、むしろこういった意味では複数回、あるいは定期的に行っているところがどこなのかというのがポイントになる。もちろん新しい店の情報も重要であるが、これもいわゆるどのパン屋の弟子筋にあたるのかといった情報などを軸にしていることが多い。　などいったいかにもパン好きな話題はさておき、以前よりひとつ疑問となっていることがある。新しいパン屋や、有名店の情報などはよく情報誌に載っているのだがそれらの雑誌ではよく都内の各エリアごとのまとめ記事のようなものがのる。その中でも各沿線ごとの記事は非常に有益である。東京はとにかく電車の路線が多い。例えば新宿に通っている人でもそこからどの路線を通って帰るかというのは本当に色々で、その路線上に面白い店などがあればそれは実際その人の生活において非常に重要なポイントになるといえるだろう。僕もかつてはよく小田急線を利用していたが、小田急線沿いにもかなり多くパン屋があり、何かの帰りに時間があるときは途中下車してそれを日々楽しんだりしていた。　さて、その中でかつてよく「京王線三大パン屋」というのが話題になっていた。京王線沿いもユニークな街が多く、パン屋もたしかにたくさんある。その中でも仙川にあるAOSANというパン屋は、いつも「京王線三大パン屋のひとつ」として紹介されていたのだ。ところが、その雑誌の他のどこをみても残りの二つが書いていない。そしてネット上など他でさがしてもこれらが書いていない。　もしかしたらその時点ではまだ残りのふたつは検討中だったのかもしれない。だがその後、割と注意深く情報を追っているが、いまだ僕の知る限り京王線の三大パン屋は一強である。 #エッセイ

2022/09/09に公開

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「魔法みたいに」　ときどき仕事をしていると、あるいは日常会話の中でも「この人はなにかこれを魔法のような方法だと思っているのではないか」というような人がいる。特に昔からよく思うのがCGに対してだ。映像をつくるときに、ちょっと現実ではありえないようにみえるものが出てきたらぜんぶCGだろう、と考える人がいる。あるいは「CGであればなんとかなるだろう」的なことを言う人もいる。こまったときのCG頼み、みたいなものだろうか。とにかくCGなら魔法のようにどんな処理でもできる、と思っている人がいる。いや、実際にはほとんどの場合そうなのかもしれないし、ある意味でそのための技術でもあることは間違いないのだが、当然CGに「演技」をさせることはできないし、あるいは別にCGを使うまでもなくむしろ撮影の工夫で可能なことはたくさんある（技術とはそういったことの積み重ねである）　音楽では「打ち込み」が同じような対象となっている。とにかく「打ち込み」でなんでもつくれるだろうと考えている人がいる。打ち込みというのは実際にその楽器を演奏するのではなく、コンピューター上でサンプリングされた音や、あるいはシンセサイザーでつくられた音を再生することで音を組み合わせて音楽をつくる作業をいう。実際、今この「打ち込み」をまったくせずに作られている音楽というのはむしろ少数派といってもいいだろう。　そしてたしかに、今打ち込むことができない楽器というのは実質ほとんど存在しないと言って良い（ほとんどの人がしらないような特殊な楽器などをのぞいて、ということである）。ただしこれは、その楽器の音をその楽器を弾かずに再生することができるという意味であって、「その楽器の演奏者のように」再生できるという意味ではない。例えばギターの打ち込みは可能だし、様々な奏法があるといえるギターでもその多くを打ち込みによって再現できるようになった。しかしながら、ではギタリストが弾くように打ち込めるかというとそれはかなり難しい。そして何より、そんなことをするよりも弾いた方がはやいという場合がほとんどだ。　ここは意見がわかれるところかもしれないが、より「その楽器らしく」打ち込むことができるようになるためには、その楽器についての理解と実際の演奏力が必要である。頭の中で想像できて、それが実演できれば実際にそれを打ち込むのも早く、正確になる。しかし、そこまでできるのだったら弾いてみたほうが早い。例えば録音や防音の環境が整っておらず、大きな音が出せないからという理由などは考えられるだろうが、それにしても弾いた方がはやいという事実に変わりはない。　むしろ打ち込みでやるべきことというのは、打ち込みでないとできないようなことなのである。魔法というのは、そのように使われなければいけない。 #エッセイ

2022/09/08に公開

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「発売日」　はじめて自分のつくったCDというのがお店に並んでから、約10年がたった。それまでも音源をつくって配信などはしていたが、少なくともその頃はやはりCDをリリースするということには特別な意味があったと思う。「デビュー」という言葉にもそれなりの重みがあったように思えた。　そのCDに入ってた曲はすべて自分で作詞作曲して編曲までした曲ばかりなので、発売されたものの内容は当然出る前に何度も、おそらく世界で一番聴いているのは自分だったと思う。たぶん10年経って、そのCDを世界一聴いている人は自分ではなくなったはずだ。だからこそ、10年たった今久しぶりにまた同じ名義でCDを出すこともできる。　そのデビュー盤の初回の500枚には特典のチェキがついていて、そのチェキを撮るために真夏のお台場で一日中撮影したのを覚えている。自分が撮られるチェキが500枚もあったのは今も昔もあの時だけだ（幸いソロショットはほとんどなかった）。それもはじめてだったから出来たことだろう。今ならどれだけ大変か知っているので事前に別の特典を提案するはずだ。　CDそのものの作り方もよくわかっていなかったが、流通の仕組みもその時に正しく理解することができた。　きょうは本当に久々に、「自分のCD」の発売日だ。たくさんの楽曲をつくってきたし、たくさんのプロデュースもしてきたけれど、自分のCDというのはやはり何かが違う。ジャケットに自分が写っているから、というだけではないだろう。　あと何回この気持ちになれるかはわからないが、今は少しだけこの感情だけを楽しんでいたいようにも思う。　 #エッセイ

2022/09/07に公開

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「フラゲ日」　CDがリリースされる、となったときに重要になるのは当然発売日なのだが、それ以上に注目されるのが「フラゲ日」の存在だ。簡単に言えば発売日の前日、CDが入荷される日のことで、店頭にはこの日からCDが並ぶことになるので実質的にはその日から購入することができる。　これは配信リリースなどでは存在しない。配信は発売日の0時から発売される（ある意味ではこちらのほうが当たり前なのだが）ので、フラゲ日は文字どおり「フライング」で音源を入手できるということになる。　日本ではCDの多くが水曜日に発売となる。これはオリコンの集計上の問題で、水曜日に発売することでその週のウィークリーチャートに合算される枚数が最も多くなるのだ。（もちろんチャートを気にしないという人もいるし、あるいはむしろデイリーチャートだけを狙ってそれ以外の曜日に発売するパターンもある。いずれにしても若干時代遅れの理由ではある）。そのためフラゲ日は自動的に火曜日が多くなる。　フラゲ日、という言葉を僕自身は自分がCDリリースをするようになるまであまり意識したことがなかった。田舎に住んでいると、そもそも発売日にちゃんと購入できるということのほうが少ないし、買おうと思ったら予約しておかなければいけないので結局手に入るのはやはり発売日以降なのだ。ただ、むしろCD以外では「フラゲ」していたものもあった。　例えば多くの人にとってなじみがあるのが「ジャンプの発売日」ではないだろうか。小中学生の頃、やはり『週刊少年ジャンプ』を読んでいる人は多かった。といっても、自分で購入している場合もあれば家族や友達が買ったものを読んだり、はたまた立ち読みで読んでいたりとその方法は色々だったと思うが、とにかく「いかにはやく読むか」ということも重要だったのだ。　基本的にジャンプは月曜日に書店やコンビニに並ぶ。あるいは僕の場合は電車通学だったので、駅のキオスクなどでも買うことができた。コンビニも本屋さんも近くにはなかったので、駅で通学時に買うのが一番早い。　ところで月曜日の朝に店頭に並べるためには、コンビニはともかくとして書店などでは当然前の週末には入荷されているはずである。田舎の本屋さんなどでは、これを勝手に（なのかどうかはわからないが）土曜日くらいから店頭で売っているところがあった。子供達の間では「どこどこではジャンプが土曜日から読める」「金曜の夜にあるところもあるらしい」などという噂が行き交った。　おそらく今でもこういったことはどこかでは行われているのだろう。もちろんルール違反ではある。ただ、たしかにあのとき「情報を早く知ることの価値」について何かしらの知見をはじめて得たということだけは確かだった。 #エッセイ

2022/09/06に公開

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「近所の人」　近頃は、「近所の家の人との交流」というのがなくなってきたという。たしかに、特に都会に住んでいると、例えばマンションの隣にどんな人物が住んでいるかということすらしらないということが多い。昔のアニメや漫画などを見ると、子供が近所の家に好き勝手に遊びにいったり、あるいは近所の人が気楽に子供に話しかけて遊んだりというシーンが多々あるが、今では防犯の意味でもそういったことは避けるようにと子供は教えられるだろう。「知らない人にはついていかない」というのは当然昔から防犯の基本なのだが、少なくとも今のほうが「知らない人」という範囲が広がって、近所の人でもほとんどは知らない人というわけなのである。（その一方でネット上に「知ってる人」が増えたりもしている）　僕が子供のころは、田舎だったからかもしれないが、今よりは随分とこういった交流があったように思う。近所の人（だいたい半径数100mくらいの町内の人）というのは結構顔も名前も知っている。（僕が向こうを知っているというよりも、地域の人は子供達の顔を覚えている、ということだったと思う）。その中でも、特に地元のとある大きな会社の社長さん（会長だったかもしれない）はよくしてくれたのを覚えている。　おそらく仕事上はもう結構暇になっていたのだろう。僕らが小学校の帰りくらいの時間になると、ちょうど通学路に家があったこともあって、よくその家の前で出くわした。普段は挨拶をするくらいなのだが、時折家に寄っていけということでお邪魔してお菓子をもらったりする。今の感覚からするとちょっと危ない感じもするが、当時はもちろんその人のことは地元の人はみんな知っていたし、何度もいっていたので特別に問題はなかった。（学校の帰りにお菓子をもらうのは、いずれにしてもやや問題があったような気がするが、問題があるということは楽しいということでもある）　ある時、僕はそのときは一人だったのだが、その社長から帰り際に「君は大物になるだろう」ということでプレゼントをもらった。何をもって僕が大物になると思ったのかまったく覚えもないことなのだが（たしかに、その社長も知っているであろう僕の父はかなり身長が大きく、逆に当時の僕は割と背が低かったので、遺伝の傾向からいってその後体が大きくなるであろうことは概ね予想できたといえるし、たしかにそれなりに大きくはなったが）、何かを感じたのだろう。社長がくれたのは、本人の足形だった。手形ならばまだ聞いたことがあるような気がするが、足形というのはいったいどのようなタイミングで用意することがあるのだろうか。こうやって訪れた子供、あるいは社員などに配ったりしているのだろうか。　僕はまだ人生で、足形を誰かにプレゼントしようと考えたことはない。もしかしたらそう思えるような「大物になりそうな人」にそのうち出会えるかもしれないが。 #エッセイ

2022/09/05に公開

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「４本しかないんだから」　ギターを始めたばかりの頃とか、あるいはまったく楽器やアンサンブルといったことに関心がない人からすると、ベースというのはどういう楽器なのかよくわからないだろうと思う。ギターと同じような形をしているが、どうやら低い音が出るらしいとか、弦がギターよりも少なくて４本しかないらしいとか、そういった情報を総合した上で「これいる？」となるのだ。　もちろん、結論から言ってしまえばベースは必要である。今もし僕が音楽を作る上で、ギターかベースかどちらかは使ってはいけないと言われたらおそらくベースを使うほうを選ぶ。中学生の頃、「ギターがあればベースいらなくないか」と思ってたやつ（僕である）には思いきり反省してもらいたいところだ。　しかしたしかにこのように意味がない存在のように思われてしまう要素がいくつかあるのだ。とりあえずエレキベースに限って話すが、例えば前述のとおり、弦が４本しかないというのもポイントだ。ギターは６本もあるのだから、これで事足りるだろうとか、ギターよりも簡単だろうとか思われることが多い。実際大学生の頃のサークルでも「ギターが弾けるのだから、ベースも弾けるだろう」ということでベースを弾くことになったこともある。たしかに突然ピアノをやらされるよりは幾分か似通ったところもあるが、そもそも違う楽器と存在しているのだからこれらの存在意義は当然それぞれにある。　まず、音楽に詳しくない人はあまり感じないかもしれないが、ある程度のところにくるとベースは非常にかっこいいということが判明する。ギターの数倍はかっこいいと思えてくるはずだ。そのあとまたしばらくするとギターがベースの数倍かっこいいと思われる時期が来るが、安心してほしい。さらにそのあとにベースがその何倍もかっこいいと思えるフェーズが来る。いずれにしてもベースがかっこいいと思えるようになるわけだし、なんならギターも前よりはかっこいいと思えるようになるので、音楽をしっかり聞くというのはこういった効果もあり人生が豊かになる。　ベースを演奏するという方に関してはどうだろうか。弦の数が少ないから、ギターより簡単だろうということでベースを始める人もいるかもしれない。あるいはこれもギターをある程度弾くとわかるが、ギターならばコードといって複数の弦を同時におさえる必要がある場面が多いのに対して、ベースはたいていの場合弾くのは単音である。これをもって、ベースはギターよりも演奏しやすいと考える人もいる。これらは端的に間違いではあるが、むしろこの選択肢の少なさなどはベースという楽器の魅力ともいえる。つまり限られた範囲で無限の演奏の可能性を実現できているという点で、あるいはその存在価値を発揮できているという点でベースは非常に面白い楽器なのだ。　 #エッセイ

2022/09/04に公開

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「誕生日を覚えている人」　だいたい同居している家族くらいだと誕生日は覚えているだろうが、ではいったいどのくらいの距離感ならその人の誕生日を覚えていて当たり前なのだろうか。　意外なところで、仕事仲間なんかの誕生日を覚えていたりすると妙に喜ばれたりするものだが、逆にあまり知らない人が自分の誕生日をしっかり把握していたりするとそれはそれでちょっと怖いような気がしないでもない。例えば好きなアイドルがいたとしたら、その人の誕生日なんかは覚えているのが普通だろう。誕生日にはイベントがあったりするものだし、今ならSNSなんかで本人がそれを表明したりする機会も多い。　そもそも、プロフィールのようなものを公開する時に「誕生日」というのはかなりの割合で記載される情報である。確かに個人情報ではあるのだが、どんな人も基本的には365日のいずれかの日の生まれなのだから、基本的にはそれほどアイデンティファイされるようなレベルではないともいえる。タレントなどだったら、書いておいてそれほど問題にもならないかあるいはそれを祝ってもらうなどのメリットの方が大きいともとれる。他に書く情報がない場合などはなおさらで、例えば住所や家族の名前は言えなくても、誕生日くらいは言ってもいいだろうという感じがする。　しかし逆に言えば、365通りしかないわけなのだから、覚えるといってもたかがしれているし、逆にそれほど特別感もない日というのがほとんどなのだから妙に覚えにくかったりすもするわけだ。　ところが、きょう9/3というのはなぜか昔からちゃんと覚えている日の一つなのである。まず子供の頃に、この日はドラえもんの誕生日だ、という情報をインプットした。　当時の僕はとりあえず漫画やアニメなどの細かい情報をたくさん覚えるのが好きだったので、そういった情報には目がなかったし、しかも「なぜドラえもんが9/3なのか」ということを考える部分も含めてとにかく印象的だった。今でもアニメの放送日がかぶると大きくイベント化されていたりするなど、ドラえもん好きではなくてもその情報をしっているという人は多いだろう。　フィクションのキャラクターでもこういった誕生日が設定されていることは多く、またそのほとんどはちゃんと「現実的」な誕生日であるので、実際にリアルな世界でもそれを祝ったりイベントとして扱うことができるのは面白い。たぶん、僕はよっぽどのことがない限りドラえもんの誕生日は忘れないだろうし、久々に復活した自分のバンドのボーカリストの誕生日であるということも忘れようがない。 #エッセイ

2022/09/03に公開

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「東大の試験」　今となっては有名な話のようだが、東大の学生がドイツ語の期末試験（持ち込み可）で、ドイツ人の友人を持ち込んだ、というエピソードがある。どんなものでも持ち込み可能だということで、もちろんルール違反ではないし、現実的に考えても、ドイツ語が中途半端にわかるよりもそんな場に来てくれるドイツ人（しかも日本語でコミニュケーションができる）の友人がいるということの方が重要な事実だろう。　とにかく東大には変わった人物が多い、というのはよく言われることだが特にその東大生が得意とする「試験」とか「勉強」の場ではその「変さ」がよく現れる（これを変さ値が高いというとか言わないとか）　他にも教授が授業中に話したカレーの作り方を書いたら試験で単位がもらえたとか（翌年同じことをやった人はレシピの記憶ミスで単位を落としたとか）こういったエピソードは枚挙にいとまがない。　レポートでも、色々なことがあった。これも聞いた話だが、ある情報学の講義の期末レポートはとある計算をするプログラムを書いて紙のレポートで提出するというものだった。プログラミング言語の指定はなかったらしい。言語には色々な種類があるが、その中にはかなり変わったものもある。whitespaceという言語は、空白のみでかかれるプログラミング言語なのだが（プログラムというのは0か1かという情報の組み合わせなので、簡単に言えばスペースをどれだけ開けるかという情報だけでプログラムとして機能させることは可能である）、これをつかってそのレポートを提出した人間がいた。ぱっと見は数枚の白紙があるだけなのである。　僕が受けた数学の試験は、こちらも「どんな言語で回答しても良い」という注意書きがあった。不思議なことに文字制限があったりもするので、字数が多くなる言語を選ぶと不利であり、結局日本語で回答するように仕向けられていたというのも面白かった。そして逆に、その試験においては余計なことを書くと減点になる（遡って前の学期の成績にまで影響したとかしないとか）というルールもあった。　それに比べたら東大の入試というのはかなり厳密なルールに則った、非常にオーソドックスな試験である。あの試験では、この「変さ」は見抜きようがないのだろう。　 #エッセイ

2022/09/02に公開

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「腕時計」　僕は基本的にまったく腕時計をしないで生活をしている。これは左右の重量のバランスが悪くなることを危惧してのこと、という適当な嘘をつき続けているが、実際腕に常に何かがついているというのが感覚的に苦手なのは確かだ。　腕時計というのは、特に男性社会（とは何か、僕もよくわからない部分が多いのだが）においてある種の象徴的な存在となっているらしい。つまりどんな腕時計をつけているか、あるいは持っているかということがその人のパーソナリティを表しているということなのである。もちろん、高級なものを所持していればそれだけ裕福だということだろうし、珍しいものをもっていればコレクター的な意味合いもあるだろう。仕事上、耐久性の高いものが必要な場合もあるだろうし、当然ファッションとしての存在意義もある。　いずれにしても、腕時計というのは単に時間を表示するだけでなく、そういった意味での自己表現に繋がっているし、さらに今風にいえばある種の「マウンティング」が行われる場でもあるのだ。　ところで、あるときからApple Watchなどのスマートウォッチが広まってきた。これが流行り始めた時に、特に金銭的な意味での「時計によるマウンティング」が意味をなさなくなるのではないか、という話が持ち上がった。実際これをつけて生活することが主流になれば、誰にとっても基本的な値段は同じであるからマウンティングのしようがないといえる。それに、使用目的も時間を見ることだけでなく、スマホなどと連動した様々な用途が考えられる。　そうきいて、僕もこれなら良いかもと思った時期があった。腕に何かがついているのはやはりあまり好ましくはないが、実際それなりに利便性はあるだろう。スマホを出すまでもないけど、出さなければいけないシーンというのは僕も多く、これがスマートウォッチに置き換えられれば便利かもしれない。　しかしながら、よく聞くとどうやらスマートウォッチの世界にもしっかりとマウンティング的要素が存在するということがわかった。時計本体は同じだが、ベルトの部分など装飾に、さまざまなブランドが参入している。コラボ商品なども多い。結局これらの内容でいかようにも価格は上昇するのである。せめてどんなアプリを使っているか、というような点ならともかく（あるいはファッションとしての違いならともかく）、むしろこのようなマウンティング合戦はここにきてより熾烈になっているともいう。　こうなってくると、腕時計は見えないところにしたほうが良いのではないかとも思えてくる。時間が見えなくなるが、現代の時計の機能の多さからすれば些細なことであろう。 #エッセイ

2022/09/02に公開

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「LP4」　　最近の人は（というときにいったいどの範囲を指しているのか、というのは結局次に来る話で決まるのだが）「LP4」ときいてもピンとこないだろうと思う。　僕と同世代とか、少し上くらいの人は言われたら思い出すという感じかもしれないし、よく覚えているという人もいるかもしれない。　小、中学生の頃、今のようにサブスクで聴くとか、YouTubeできくというわけにもいかないので、好きな音楽はなんらかの方法で録音して自分の手元に保存しておくしかない。音楽を聴く手段といえばやはりCDだったが、借りたCDを録音する方法といえばMDだった。MDはデジタルの記録媒体であって、だいたい一枚でCDを80分ほど録音することができる。アルバムなら1枚分はしっかり入るのでちょうどよいし、当時はポータブルのMDプレイヤーがたくさん販売されていたので録音したものを持ち出して外で聴くということも可能だった。いわゆる音質に関わる部分（ビットレート）を考えると、CDよりはもちろん落ちるものの（CDよりサイズが小さいので仕方がない）、いまでいうmp3音源や、サブスクで聞いたりするのとかわらないくらいのでビットレートなので特に外で聞いたりする分にはちょうどよい。そもそもあまりそのような違いを感じるような環境で音楽を聴いていないのである。CDを一枚ずつ持ち歩くのにくらべたらかなり便利だ。　ところでこのMDの録音方法はいくつかその種類を選択することが可能だった。そのうちのひとつで、もっとも録音時間が長くなるのが「LP4」という録音方法だったのである。単純にいえば、「LP4」では通常のMDの録音時間80分の４倍、320分録音をすることができる。同じディスクをつかって、これまでアルバム1枚しか録音できなかったのが、単にモードを変えるだけで4枚分も録音できるということで、これは小遣いも限られている小・中学生には大変ありがたかった。いくらCDを買うよりはやすいとはいえ、録音用のMDも何枚も買っていればそれなりの値段になってしまう。僕は当時、XJAPANの複数枚組のベストアルバム（といっても必ず抜けている曲があるのだが）を借りてきて、それをLP4で一枚のMDに録音していた。XJAPANの楽曲はとても長いものが多いが、なんとかMD一枚にまとめることができる。これはすごい技術だ、と感動した。　しかしながら、聴いてみるとCDで聞いたものとは明らかに何かが違う。当たり前のことだが、容量が簡単に４倍になるわけもなく、当然何かが犠牲になっている。端的にいえばビットレートが4分の1になっているのだ。CDから比べれば悪くなっているはずの通常のMDへの録音では何も感じなかった自分でも、これはさすがに相当悪くなっていると感じられた。　そこで悩ましいが、曲によって普通に録音するものとLP4で録音するものというのをその都度自分で判断するようになった。結果、家にはLP4楽曲集のMDがいくつか生まれてしまった。今、聞いてもおそらくイマイチな音源集だろう。しかしそれが音質によるものなのか、そもそも曲の問題なのかはわからない。　今でも時折曲をきくと、「これはLP4で録音だな」と思ってしまうことがある。 #エッセイ

2022/08/31に公開

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「ミュージックビデオ」　　バンドを始めた頃、ミュージックビデオをつくるというのはもっとも大きな出来事のひとつだった。曲をつくってライブでやる、というのが基本的な動きの中、MVには人もお金も他とは比較にならないくらい必要だし、簡単には作れないものなのである。今となっては撮影機材や編集ソフトなども含めて本当にアイデア次第では誰でも参入できるものかもしれないが、当時自主制作でやっているバンドでミュージックビデオをつくるということは、大きなリスクを追いつつも大きくステップアップするチャンスだったのである。　しかしながら、僕はこのミュージックビデオを撮るという作業がとにかく不思議だった。特に考えていたのが、そもそも自分はミュージックビデオに出演するべきなのかどうかということである。　バンドのミュージックビデオには大概、楽器を演奏しているシーンがある。バンドというのは基本的に楽器を演奏するものなので、当たり前じゃないかと思うかもしれないが別にミュージックビデオというのはありのままの姿を見せる必要はないのだ。例えばバンドであっても、演奏はもちろん当て振りである。音源はレコーディングされたものを最終的につかうわけなので、撮影時の演奏の音は使われることはない。だから実際にはありのままの姿を見せているわけではないということは一目瞭然なのである。　さらにいえば、バンドの演奏をしているシーンの他の部分にはかなり不思議なところはある。例えば草原みたいなところで演奏をしているミュージックビデオはたくさんあるが、そこには本来電源などがないはずだし、周りにスピーカーも置いている様子はない。マイクもつながってないので歌も聞こえなければ、ギターも響かないのだから、現場ではドラムの音源だけが虚しく鳴り響いているはずなのだ（さらにいえばMV撮影はドラムもしっかりとミュートして音をあまり出ないようにするから、その音すらほとんど普通の演奏とは違うものになる）。あるいは別の言い方をするならば、ただ単に当て振りをするためにMVに参加しているということなのである。　きょうも世界中で当て振りが行われ、ミュージックビデオは制作されている。その時間、スタジオに戻って曲を作りたいと思っているミュージシャンもいるかもしれない。 #エッセイ

2022/08/30に公開

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「パソコン」　現代の音楽家、特に作曲家のほとんどはパソコンを使って音楽をつくっていると思われる。使い方はそれぞれだが、つくったものを録音したり、編集（編曲）したりするには、パソコンの中でDAWと言われるソフトを使うのが最も効率よく、また今となっては一般的だと言えるだろう。　結果として、今DAWを駆使してこういった仕事をしていると、パソコンが好きで、パソコンに詳しそうだ、という印象を持たれることが多い。　大体、あえて「パソコン」と書くような人が、詳しいこともないだろうというのが本音なのだが、実際そんなにパソコンというものに思い入れもないせいか詳しくもないのである。もちろん、毎日仕事に使っているのである程度詳しくはなるがそれはあくまで自分が使う範囲での話だ。　しかしながら、一時期は毎年のように新しいパソコン、それも最新のものを購入していたことがあった。これは、ライブで使うためのものだったのだが、パソコンをライブ中に動かすのは大きなリスクが伴う。容量の大きなデータなどを連続して長時間動かそうと思うと、相当ハイスペックなパソコンでも時折はトラブルが発生する（というか、パソコンでまったくトラブルが発生しない、ということはほとんどありえない。電源を入れずに持っていたとしても、落としただの、電源が入らないだのといったトラブルが存在する。）普段使っている上では多少のトラブルは、少し待って別のやり方でやり直すとか、といったことで解決することができる。　逆に、ライブの現場というのは基本的にやり直しがきかない。パソコンが止まったのでもう一回というわけにはいかないのだ。そのリスクを減らすためにとにかく新しくてスペックの高いパソコンを購入するのだ。　当然スペックの高いそういったパソコンはそれほど安くない。市販のパソコンでは機能が増えれば増えるほど、スペックが高ければ高いほど値段も上がるのは当然だが、この二つ自体も比例して増えていくので、高いパソコンに自分にとってはいらない機能がついている場合も多い。こういった機能は使わないから無駄というだけでなく、音楽を再生する際にはむしろマイナスになったりもする。　できる限り価格を抑えて、それでいて音楽以外の余計なソフトなんかをはずしたカスタマイズパソコンがちょうどいいかもしれない。　毎年続けてきたら、パソコンにはほんの少しだけは詳しくなった。ただ、300番代だけではあるが。 #エッセイ

2022/08/29に公開

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