綛谷かせや久美|料理本マニア|編集者

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4月からお弁当生活が始まる人？考えるだけで憂鬱？　新しい挑戦にワクワクしてる？　とにかくお弁当は毎日のこと。とくに子どものお弁当となると、大人みたいに「コンビニで」が効かないわけだから、作り手のプレッシャーは半端ないと思います。だって、あの笠原将弘さんだって、「最初は眠気に勝てず、何度も寝坊した…」と本書のあとがきで語っているくらい。ただ、そこはプロ。起き上がれば、米をとぐことからスタートして、おかず3品作って、詰めて、だいたい40分というから、やはり手際が違う。とはいえ、シンプルなおかず、どちらかというと茶色い、ふりかけも偏ってて均等じゃない…など、クスリとしてしまうお弁当写真が続くから、ああこれでいいのか、と思えるのではないかな。本書の真骨頂は、笠原さんご本人による毎朝弁当のリアル写真でしょう。前半のお弁当は本のために美しく盛り付けられたのだとわかってしまうだけに、いいの？と心配したのですが、笠原さんだからいいのですよね、きっと。そうそう、流行りの海苔弁もどーんと見開きで作り方あり。これがおいしそう。笠原さんのお弁当本といえば、2013年に出版した『和食屋の和弁当　毎日食べたい、しみじみうまい』（主婦の友社）がイチオシだったのですが、本書が出て、優勝をかっさらっていってしまった気がします。だって3人の子の父として作るお弁当のリアリティと愛。にじみ出てますもん。『毎朝父さん弁当』笠原将弘著 KADOKAWA 2022年2月17日発売 1,650円 #お弁当 #お弁当記録 #笠原将弘 #cookbooklab

2022/03/31に公開

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グレイヘアの女性がふんわり微笑む美しい表紙、思わず手にしてしまいました。著者は結城アンナさん。いわゆるタレント本です。タレントが料理本を出してヒットした本といえば、2020年の滝沢カレンさんの『カレンの台所』（サンクチュアリ出版）ですね。ちょうどコロナ・パンデミックが始まって、世界中が不安に襲われて外出自粛していた時で、日本中がほっこりしました。あれから2年。すぐに終わると思っていたパンデミックはもはや生活の一部。そうなってくると気になるのは生活の質です。人にも世界にもやさしく、豊かに。どんな人でも。年齢に関係なく、いつからでも。生活の質を高めたい。本書の表紙は、そんな気分を体現しているように思えました。アンナさんが提案するのは、旬の野菜や豆のレシピに魚介類、ハーブや外国のエキゾチックなスパイスを使いこなして、まるで海外の料理本のようなセンスのいい食卓。真アジの焼いたのに柿のサルサソースをかけるとか、焼きなすにはザクロの実とたっぷりのディル。海外の料理本を眺めているような美しさ。食卓を飾るのは、自前の食器やカトラリー、クロス類。プロのスタイリストが作るのとは違う、著者本人のライフスタイルを垣間見るよう。「タレントだから」という一言でくくるのは簡単ですが、なぜこの本に惹かれるのか、逆にまったく興味がないのはなぜなのかを深堀りすると、今の自分が求めているものの手がかりがつかめそう。いえ、美しい誌面はそんな邪念を解き放してくれるものとして、素直に受け止めればOK。「暮らし、楽しみましょう」というアンナさんの声が聞こえてきますよ。『Anna's Cookbook』結城アンナ著主婦と生活社 2022年3月4日発売 1,540円 #�料理本 #cookbook #cookbookcollector #料理本編集者

2022/03/21に公開

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料理家上田淳子先生の新刊。現実を生きる私たちに今こそ必要なもの、それは「ラクするご自愛ごはん」でしょ！という歯切れのいい上田先生の声が聞こえてくるよう。本当はちゃんとやりたい、誰だってていねいな暮らしが理想です。でも、現実はそうじゃない。だったらいかに手軽においしく食べられるか、レシピという形で提案するのが料理家の仕事なんだから、カット野菜でも、コンビニ食材でもいいじゃない、とにかく自分がご機嫌になれるごはんをなんとかしよう、ごはん作りを楽にしよう。そうやって作られた本です。だから思い切り方が潔いの。安心するの。これでいいんだ！て思えるの。料理が面倒と感じるあれこれを簡略化するアイディアも使えます。「なんだ、これ日頃からやってます」という人は、堂々とやり続けてください。知らなかったーという声は、これから一人暮らしを始める人かしら。そう、進学や就職で家を出る子どもたちの荷物の中にそっと忍ばせておくお母さんが多いと思うわ。仕事で疲れちゃった日は、冷蔵庫の卵と春雨でスープにすればいいやってなる人多数だと思う。育児で手が離せないという若いお母さんは、この本を夫に渡して「これ作って」と言えばいいと思うの。そんなふうに、日常の使い方が目に浮かぶ料理本です。『ラクするご自愛ごはん』上田淳子著主婦の友社 2022年3月31日発行 1,540円 #料理本 #料理本好き #簡単レシピ #編集者

2022/03/12に公開

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あたらしいです。料理研究家・今井真実さんの初著書にして定番料理にあたらしさを見せてくれました。まるでベテラン料理家のような風格漂うレシピです。表紙にもなった「あたらしい焼豚」だけでなく、「燻さないベーコン」、卵だけで作る「たどり着いたカルボナーラ」でもそのあたらしさはわかりますが、肉と魚や、野菜の掛け合わせで作るお惣菜などが「言われてみればそうか」という静かな驚きのあるレシピなんです。あえて「時短」とか「簡単」とか言わずとも、毎日のことですからそもそも簡単ですぐできるもの。派手ではないけれど、「ああすぐ食べたい」と、台所に立ちたくなる料理たち。お茶碗一杯のごはんがあれば、大ごちそうになるってことを感じさせてくれます。それらが今井さんのやさしい文章たっぷりに綴られています。時折はさまれているコラムも、今井家の食卓を一緒に囲んでいるような感じ。もともとnoteで発信していたことがきっかけで出版が決まったとのことですから、それもそうか、なわけです。出版のいきさつについてはぜひnoteを読んでみてください。撮影を担当されたのが今井さんの夫であることも、この本のあたたかみをさらに増しています。それらを新しいデザインでまとめた藤田康平さんはやっぱりすごいデザイナーだなと思うし。いろいろな意味でぜひ手元に置きたい本です。『毎日のあたらしい料理　いつもの食材に「驚き」をひとさじ』今井真実著 KADOKAWA 2022年2月16日初版発行 1,650円 #料理 #レシピ本 #料理本 #初著書 #料理研究家

2022/03/01に公開

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お菓子の本の世界は、「かんたん」「手抜き」か、アートのように美しいかのどちらかに寄っているものが多くなっています。本書はタイトル通りマニアックです。しかもテーマは「凝固剤」。ここでいう凝固剤とは、ゼラチン、アガー、寒天、ペクチンの４つ。そう、ゼリーやババロアなど生菓子を作るために使う素材たちです。これらを本書では徹底検証。冷菓（生菓子）って、作る人は多いのですよね。オーブンがなくても材料さえ揃えば手軽に作れますし、焼き菓子に比べてカロリーが抑えられるので「ちょっと一口」という欲望にこたえてくれるから。私自身も缶詰みかん入りの牛乳かんが常に冷蔵庫にあるクチです。なので本書を手に取っていちばん最初に確認したのが寒天の章。砂糖を増やす、寒天の量を変える、レモン汁（酸）の量を変える、牛乳の種類を変える、砂糖の種類を変えるという５つの検証になるほどが止まりませんでした。経験上「そうかな」と思っていたことが「やっぱり」に変わるのは大きいですし、「そっち系は考えなかった！」という驚きは今後のヒントにもなります。それら検証がゼラチンやアガーでもそれぞれ行われており、「こういう出来上がりを目指すならどれを選ぶべきか」という疑問にこたえてくれます。繊細さが必要とされるお菓子作りでは、知識があるかないかで仕上がりが明らかに変るのですから、こうした検証の数々は貴重です。裏表紙（表４）に並んだ型抜きゼリーの数々が検証結果を表すもの。こんな違いが！という理科実験のような楽しさに制作意欲が刺激されるかも。いやいや、私は徹底的においしい冷菓が作れればいいのよ、という人は、検証結果を経て最適解を得たレシピで宝石にように美しいジュレデザートをぜひ。ちなみに著者の“マニアック”シリーズはこれが3冊目。他2冊もぜひチェックしてみて。『たけだかおる洋菓子研究室のマニアックレッスン　凝固剤編』たけだかおる著河出書房新社 2022年1月30日初版発行 2,585円

2022/02/15に公開

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本書は「ラオス、カンボジア、ベトナムのインドシナ三国がフランス領インドシナに組み込まれるより昔からの品と、コロニアル時代に生まれたものだけを選んだ」という46品のレシピと、それぞれの地域の暮らしや文化背景が詳しく説明された書です。気軽に作って楽しむいわゆるレシピ本ではありません。料理を入り口にした、インドシナ三国の文化の理解への手がかりを知る本です。著者であるお二人が持ち帰ってきたという現地の食器や調理道具、レトロな家具などがそのまま本の中でも使われていて、それがなんともおしゃれ。とはいえ、中には現地でお祝い事やもてなしに使われるという虫食の写真がどーんと見開きに使われているのでぎょっとしてしまう人もいるかも。 それも含めて、未知の文化を味わうための良書だと言えます。でもいちばんは、本書と同名の1日1組限定の料理教室「アンドシノアーズ」に行く前の予習に、あるいは行った後にあの味を追体験する時に開くのがいちばん。著者おふたりのインドシナへの深い愛がとてつもなく美しいんです。レシピ本というより読む本というほうがしっくりきます。『アンドシノアーズ旧フランス領インドシナ料理』園健・田中あずさ著柴田書店 2020年7月30日発行 2,420円 #インドシナ料理 #フランス領 #ラオス #カンボジア #ベトナム #料理本 #cookbook #柴田書店 #cookbookreview

2022/02/08に公開

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コロナ禍でブームになったものとしてリストの筆頭に挙がるオートミール。日本の食卓にはなじみの薄いものでしたが、実は私、けっこう昔から好きでした。えん麦の香ばしい香りや味がどストライクで、グラノーラはもちろん、えん麦入りのクッキーやケーキを見ると食べたくてたまらなくなるんです。だから本書は密かに注目していました。だって、著者は星野奈々子さんだし、スタイリングも撮影も、デザインも編集もあのメンバーとなると、期待しないほうが無理というもの。ところが、今回は著者の星野奈々子さんから献本いただいてしまって、購入して貢献ということができなかったのが心残り。いただいたから言うんじゃないんです。本書はまず「本」そのものの様子をじーっくり味わってください。おしゃれの一言でまとめないでください。それからもむろにレシピを読んでみて。混ぜるだけ、混ぜて焼くだけという本書謳い文句に偽りなしだから。「これが冷蔵庫にあったら早起きできる」「これがあるなら他のおやつはいらない」「これがあるからカラダが納得する」そんなラインナップで、「オーバーナイトオーツ＆コールドオーツ」「クッキー」「バー」「グラノーラ」「ケーキ」「スコーン＆マフィン」が全63レシピ。これだけあれば十分だよなあ。流行りだから、じゃなくて、おいしいから手元におきたいレシピ本です。スーパーで手に入る材料ばかりだから、オートミール初心者というだけでなく、お菓子作り初心者にもすすめたい。とりあえず私は「オーバーナイトオーツ　アップルシナモン」をこれからしかけます。ワクワク。『OAT MEAL　カラダにやさしいオートミールの朝食とおやつ』星野奈々子著 PARCO出版 2022年2月1日発行 1,760円 #レシピ本 #料理本 #料理家 #星野奈々子 #オートミール

2022/02/03に公開

#レシピ本#料理本#料理家#星野奈々子#オートミール

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