母は、太陽くんに夢中だった。 彼は専門学校に通いながら夜はホストをしていて、まだ若いのに垢抜けた雰囲気を持っていた。笑うと白い歯がきらりと光り、誰にでも優しげな態度を崩さない。 けれど母にとっては「お客の一人」なんかじゃなかった。 母の顔や仕草は、太陽くんと出会ってからどんどん“女”に変わっていった。 化粧は念入りになり、服も若作りに派手になっていく。 家では「もう行かない」と言いながらも、次の日にはまた出かけてしまう。 行く前はウキウキと笑い、帰ってきたら泣き叫んでいた。 「もう無理、あんな人知らない!」 そう言っては布団に顔を埋めて泣き、次の週にはまた店に通っていた。 わたしはその姿を黙って見ていた。 母が女として必死にもがいているのを、子どもの目で受け止めるしかなかった。 やがて、太陽くんはホストを辞め、美容師になると告げた。 その日から、母は壊れたように荒れた。 怒鳴ったり泣き崩れたり、どうしようもない不安に溺れていった。 ――そのあと、母が連れてきたのが「鏡くん」だった。 それが 私のファーストキスの相手だった。 ホテルの一室。母と姉と三人で泊まっていた夜中のこと。 母はホストクラブから帰ってくると、背の高く美しい男を連れていた。 金髪に、大きな十字架のネックレス。香水とアルコールが入り混じった匂いをまとい、部屋に入った瞬間、空気が甘く重く変わった。 ……嫌だったはずなのに。 怖かったはずなのに。 どうしようもなく、めちゃくちゃで、汚れていて、でもそれが“最初”だった。 わたしのファーストキスは、母が連れてきたホストとのキス。 忘れられない夜が、胸の奥に焼き付いてしまった。 その後も、母はホストに通い続けた。 ときどき仙台まで足を伸ばし、わたしたちはホテルに泊まった。 母は地図が読めないから、いつも道案内はわたしの役目だった。 夜の街に出ると、ネオンがまぶしくて、空気はアルコールの匂いでむせ返る。 酔っぱらいの笑い声や、キャッチの男たちの呼び込みの声。 中学生のわたしはその中を歩きながら、母をホストの店まで送り届けた。 「ここだよ」 母にそう伝えると、彼女は軽く手を振って店の扉に消えていった。 残されたわたしは、街のざわめきの中で立ち尽くす。 母を送り届ける役割を果たすだけの存在。 まだ14歳のわたしには、あまりにも場違いな光景だった。 #うつ #ホスト #毒親 2025/10/14に公開228 回視聴 2.63%60朝焼けが昇るころ、配達を終えて帰る。 でも「おつかれ」と言ってくれる人はいなかった。 家に着くと録画していた深夜アニメを観た。 それが唯一の楽しみだった。 笑っているキャラクターたちを見ている間だけは、暗い夜や重たい新聞のことを忘れられた。 そのあと、学校へ行くまでのわずかな時間、少しだけ眠る。 でも目を閉じた瞬間に時間は過ぎて、気がつけばもう登校の支度をしなくてはならない。 体は重く、まぶたは鉛のように落ちてくる。 必死にこすりながら、自転車にまたがった。 学校までは三十分。 父と母が離婚してから、家が遠くなってしまったせいだ。 坂道を登るたびに足が震え、眠気で意識がかすんでいく。 それでも、誰にも弱音は吐けなかった。 新聞配達をしていることを知っていたのは、先生だけ。 友達には言えなかった。 「なんでそんなことしてるの?」と聞かれるのが怖かったし、恥ずかしかった。 だからわたしは、普通の生徒のふりをして教室に座っていた。 でも本当は、誰よりも眠くて、誰よりも疲れていた。 父は突然、自ら命を絶った。 その知らせを聞いたとき、胸が潰れるような思いがした。 これが人生で一番の悲しみなのだと、そのときは思った。 ――でも違った。 その先に待っていたのは、もっと深い闇だった。 父の死よりも、さらにわたしの心を壊していく出来事。 姉と、母と、わたしをのみ込む渦。 #うつ #生きる #人生2025/10/13に公開293 回視聴 5.12%141母は死んだ。 ある日突然、姉からの電話で知らされた。 ――「ママが死んだ」 わたしは耳を疑った。 母はいつも「死にたい」と言っていた。 その言葉を聞くたびに、わたしはもう慣れてしまっていた。 どうせ死なない。 そう思っていた。 だけど、その日は本当に母は死んだ。 涙があふれた。 ひどい母親だったはずなのに。 何度も嫌いだと思ったのに。 それでも、大好きだった。 愛していた。 嫌いになんてなれなかった。 その事実を受け入れられないまま、わたしの頭の中には次々と記憶がよみがえってくる。 大きな家で始まったはずの子ども時代。 ホストに狂っていった母。 母と姉とわたしで過ごした暗い夜。 そして――母に強要された「生きるため」の日々。 どうして、あの時、止められなかったのだろう。 どうして、救えなかったのだろう。 母の鬱病から始まったこの物語は、わたしと母と姉の壊れていく過程の記録だ。 大きな家。 リビングには日の光が差し込み、テーブルの上には果物が並んでいた。 家族で囲む食卓。 その光景を、わたしは今でも覚えている。 ――けれど、幸せは一瞬で終わった。 父と母の声は次第に荒くなり、やがて怒鳴り合いに変わる。 目の前で首を絞め合う姿。 怖くて声も出なかった。 暗い部屋、砂嵐だけが流れるテレビ。 取立人が何度も玄関のチャイムを鳴らし、電話は鳴りやまない。 六歳のわたしは息をひそめて、姉と一緒に親の帰りを待った。 売られていく家。 転校先で始まったいじめ。 母が姉を叩き、わたしは何もできずに見ているだけだった。 わたしの“幸せな家”は、本当に一瞬しか存在しなかった。 中学生になり家計のため新聞配達をはじめた 朝四時。 まだ外は真っ暗で、静まり返っていた。 布団から出るのはつらかったけれど、起こしてくれる人なんていない。 アラームを止め、自分の力で体を引きずり起こすしかなかった。 新聞は重たかった。 前かごと後ろかご、両方にぎっしり積むと、自転車はふらついて今にも倒れそうになった。 まだ背の低かったわたしには、その重さが体にずしりとのしかかった。 冷たい空気の中、重さでハンドルが揺れ、指先はすぐにかじかんだ。 一軒一軒、玄関先に新聞を置いていくたび、心の奥で思った。 ――どうしてわたしが。 まだ子どもなのに。 同じ年ごろの子たちは、まだ眠っている時間。 温かい布団の中で夢を見ている。 わたしだけが暗い道を走り、冷たい風にさらされていた。 配達の途中で人とすれ違うこともあった。 「おはようございます」と声をかける。 でも無愛想な男の人は、一度も返事を返してくれなかった。 それでも、わたしは毎日、同じように挨拶を続けた。 そうしないと、自分が透明になってしまいそうだったから。 夜の道は恐怖だった。 満月の日は、白く光る月明かりがわたしを照らしてくれる。 でも新月の夜は、あたりは真っ暗で何も見えなかった。 風が吹くだけで心臓が跳ね、物音がするたびに振り返った。 怖くてたまらなくて、近くの神社で魔除けのお守りを買ったこともある。 お守りをポケットに入れ、ドキドキしながらペダルを踏んだ。#生きる #実話 #鬱2025/10/13に公開496 回視聴 3.63%180大きな家。 リビングには日の光が差し込み、テーブルの上には果物が並んでいた。 家族で囲む食卓。 その光景を、わたしは今でも覚えている。 ――けれど、幸せは一瞬で終わった。 父と母の声は次第に荒くなり、やがて怒鳴り合いに変わる。 暗い部屋、砂嵐だけが流れるテレビ。 取立人が何度も玄関のチャイムを鳴らし、電話は鳴りやまない。 六歳のわたしは息をひそめて、姉と一緒に親の帰りを待った。 家が売られていく。 わたしの“幸せな家”は、本当に一瞬しか存在しなかった。 #生きる #実話 #うつ 2025/10/04に公開367 回視聴 3.54%1202025/08/03に公開333 回視聴 10.21%331髪の毛染めたあ 2025/08/03に公開19 回視聴 5.26%102025/07/17に公開348 回視聴 11.21%3712025/07/17に公開335 回視聴 8.36%2512025/07/16に公開134 回視聴 7.46%1002025/07/16に公開383 回視聴 8.62%3012025/07/16に公開303 回視聴 8.25%2322025/06/20に公開364 回視聴 10.99%3814ヶ月😆2025/06/20に公開307 回視聴 7.82%231かわい2025/06/18に公開374 回視聴 7.22%2612025/06/18に公開269 回視聴 7.43%182かわゆ2025/06/17に公開194 回視聴 10.31%1802025/06/13に公開173 回視聴 6.94%101パン美味しい😋をいえた娘😆2025/06/13に公開303 回視聴 7.59%221前髪きってみたあ😍2025/06/13に公開204 回視聴 6.37%130テンプレートつかってみた2025/06/09に公開321 回視聴 9.35%2901234...8>次へ×インフルエンサーコンテンツCSVダウンロードフォロワー総数、フォロワー増減数、エンゲージメント数、エンゲージメント率ダウンロード※ データには投稿ID, 投稿URL, 説明文, 再生数の他、LIKE数, コメント数, シェア数, 動画尺, 公開日が含まれます。 コンテンツをCSVでダウンロード